2012年5月6日日曜日

脳梗塞コラム 第2回 まだ間に合う。高血圧等の危険因子を減らせば脳梗塞発症のリスクは下がる|NO!梗塞.net-脳梗塞ネット|脳梗塞の前兆から対策、診断、症状、治療など


脳梗塞の治療やリハビリよりも予防するほうがずっと楽

いうまでもないことですが、脳梗塞を発症させ、治療やリハビリテーションなどで苦労するよりは、あらかじめ脳梗塞の危険因子を可能な限り抑え、予防に努めることのほうが楽に決まっています。「まさか、自分は脳梗塞にならないだろう……」こんな安易な思いが脳梗塞を呼び寄せます。脳梗塞はもうあなたのすぐそばまできていて、襲いかかる寸前なのかもしれません。

幸いなことに脳梗塞という病気は、その危険因子を抑えることによって、発症のリスクが確実に押し下げられる脳血管障害です。実際、約4700人を対象としたアメリカの臨床試験(SHEP(シェップ)スタディ)では、降圧剤で高血圧という危険因子を除くと、脳卒中の発症が約36%も減らせるという事実が科学的に立証されています。脳梗塞の危険因子を減らすのに、遅いということはありません。いくつもの危険因子を減らせば相乗的に抑制効果が高まり、脳卒中の予防を可能とします。


特発性側弯症の予後

血圧を5〜6oHg下げるだけで脳梗塞発症のリスクが42%減

脳梗塞を発症させる主な危険因子としては、1:高血圧(61%)、2:糖尿病(24%)、3:不整脈(21%)、4:喫煙(17.5%)、5:脂質異常症(17%)、6:過度な飲酒、7:肥満、8:運動不足、9:ストレスがあげられます。カッコの中の数値はリスクの多寡を表しています。こんなに沢山の危険因子があるのですから、手をつけるのはきわめて容易です。やりやすいところから危険因子を減らしていくのが、確実に成果をあげるコツです。

まず脳梗塞の危険因子の筆頭である高血圧は、最近の研究によると、最大血圧を5〜6oHg下げるだけで脳梗塞の発症リスクを42%も減らせる、というデータが明らかにされています1)。血圧を下げれば動脈硬化の進行が抑えられ、血管の狭窄化を阻み脳梗塞の予防につながるからです。

正常な血圧とは最大血圧130oHg未満―最小血圧85oHg未満です。理想的な血圧は120oHg未満―80oHg未満です。高齢者であっても、血圧を下げれば下げるほど脳梗塞の発症を減らせることがわかってきました。とくに高齢者では最大血圧を下げることがポイントです。食事療法や運動療法などで血圧が十分に下がらないときは、迷うことなく病院やクリニックを受診し、医師と相談して降圧剤を処方してもらうことが求められます。


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脳梗塞を起こしてから糖尿病に気づいた人も少なくない

脳梗塞を発症させる第2番目の危険因子としては糖尿病があげられます。糖尿病にかかると動脈硬化が進み、脳梗塞の発症リスクを2〜3倍高める、というデータがあるからです。2)

現在、糖尿病の患者は約740万人、その予備軍を含めると約1620万人にのぼり、成人6人のうち1人に糖尿病が疑われます。

問題なのは糖尿病に気づいていない人や、気づいていても治療を受けていない人が多く、糖尿病とその予備軍の約半数にのぼることです。脳卒中の患者はしばしば糖尿病を患っています。脳卒中を起こして初めて、糖尿病に気づいたという人も少なくありません。

健康診断などで「血糖値が高い」と告げられたら、一度は糖尿病の専門医を受診することが必要です。きちんとした診断と適切な治療を受けることが大切です。

高齢になると10年間に約半数の人が脳梗塞を引き起こす心房細動

脳梗塞の第3番目の危険因子は、心臓の収縮が不規則となって脈が遅くなったり速くなったりする不整脈です。心臓に血栓ができやすくなり、それが脳へ飛んで脳梗塞を発症させてしまいます。


拒食症·臓器不全

代表的な不整脈の原因は心房の筋肉が細かく震える心房細動です。心房細動は50歳前後までならそんなに恐ろしくはありません。症状がまったく現れない人もいるくらいなのです。しかし、50歳前後を境に、心房細動から脳梗塞を招くことが急増するのです。

男性の場合は60歳以上、女性の場合は65歳以上になると年間5%の確率で心房細動から脳梗塞を起こします3)。つまり、心房細動をそのまま放置しておくと、10年間に約半数の人が脳梗塞を起こすほど発症の確率が高いのです。

「ミスタージャイアンツ」こと長嶋茂雄さんも、心房細動から脳梗塞を起こした患者の1人でした。心房細動と診断された人は、血液を固まらせない抗凝固薬の服用など、なんらかの治療が必要とされます。

脳梗塞を急増させた欧米型食生活と脂質異常症

脳梗塞の危険因子としてはさらに脂質異常症があげられます。脂質異常症とは高脂血症の新たな名前で、善玉コレステロールが少なく悪玉コレステロールが多い状態です。コレステロールが血管に沈着して動脈硬化を推し進め、脳梗塞の発症に向けて準備を整えている状態といえます。


戦後、脂質異常症が急増してきたのは、肉や卵など動物性脂肪の豊富な欧米型食生活が定着してきたからです。もともと日本の脳卒中の患者はアメリカと比べて4倍も多いのですが、塩分の制限によって脳出血が減少する一方、欧米型食生活の普及によって脂質異常症が増加し、その結果、脳梗塞が増えてきているのです。

普段から肉や卵などの料理よりも、魚や野菜を主とした和風の食事を摂るようにすることが重要です。脂質異常症と診断されたら薬物療法を含め適切な治療を受けるようにしてください。

ほかに脳梗塞の危険因子として喫煙、過度な飲酒、肥満、運動不足、ストレスなどがあげられます。いずれも脳梗塞を予防するには可能な限り避けることが求められます。

脳梗塞の発症リスクを下げるための生活とは、イキイキとした毎日を送るための健康ライフといえます。ぜひ、いまから始めてみてはいかがでしょうか。


参考資料
1) 『脳卒中がわかる完全読本』齋藤勇名誉教授〈杏林大学医学部〉著、保健同人社、2003年3月1日刊行
2) 「米国心臓病協会ガイドライン(2000年)」
3) フラミンガム研究に関する下記論文(1991年) Wolf PA, Abbott RD, Kannel WB. Atrial fibrillation as an independent riskfactor for stroke:the Framingham Study. Stroke 1991;22:983-988

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